心が痛い。また、システムに対する無神経とIT運営のスキル不足にあきれてしまう。
操作ミスをしたオペレータに対してではなく、名証のシステム部門に対してである。
私もかつて某都市銀行のシステム部員として尽力していた。このような発表をすることは理解を超えている。
以下の記事をベースに細かくコメントいたします。
元都銀システム部のシステム責任者として、あまりにも稚拙なステートメントに憤りを感じていますので、強いトーンであることをあらかじめお断りしておきます。
名証システム障害、原因は外注先オペレータの“操作ミス”[日経BP]
■『システム障害が起きたのは、システム運用担当者(オペレータ)が起こした操作ミスが原因』
原因ではない。トリガーであるが、原因であるはずがない。
■『操作ミスにはすぐに気付いたものの、回避策の不手際と、その後の報告漏れが重なり障害発生を防げなかった。』
これが直接の原因である。
・これほど重要な操作をマニュアルで実施していることのリスク認識がない。
・重要なコマンドにもかかわらず、一人で入力している。普通は再鑑者がとなりにつくもの。
・操作ミスを発見するためのシステムガードが存在しない。
・操作ミスを報告させる土壌が名証には存在しない。
■『名証は、システムの開発・保守・サポートを富士通に、運用は富士通中部システムズに委託する契約を結んでいる。』
だから監督責任は名証にある。
■『オペレータはバックアップ処理の操作ミスを、名証の担当者や、同システムを実際に担当しているSEに報告しなかった。』
なぜこのようなことが起きたのか? システムに対する日頃の姿勢(現場の風習)の報いである。
■『連絡を受けた担当SEも報告内容を勘違いし、「特に問題はない」とオペレータに回答。名証の担当者や担当SEの統括責任者には報告しなかった。 』
これは富士通体制の問題。富士通はスキル不足だ、といううわさは最近良く聞く。
私も以前、痛い目にあっている。しかし、これを踏まえてきちんとコントロールするのが管理者側の当然の姿勢。昨日今日の付き合いではないはずだから。
■『前営業日に起こった事項を連絡ノートに記載し次の担当者に申し送りすることになっている。だが、「問題なし」と判断された操作ミスは連絡ノートに記載されず、翌営業日のオペレータには情報が伝わらなかった。』
これは大きな問題。連絡ノート(オペレータ日誌)への記入に対する教育不足。
また、キャンセルした事実はシステム的に記録されなければならない。オペレータ日誌記入を人にばかり頼るのは偶然のミスも誘発する。
■『名証は18日、再発防止策も発表した。対策は大きく二つある。
一つは、操作ミスを防止するための施策で、運用手順の遵守の徹底を改めて教育するほか、運用作業終了後にミーティングを実施し、情報の確認体制を整備する。ミスを減らすために、コマンドの見直しや自動化にも取り組む予定だ。
もう一つは、該当テーブルに対する管理、保守についての施策。すでに、テーブルの存在を毎日確認する運用に暫定的に切り替えている。今後はコマンド・ミスによってテーブルが消えないようなバックアップ方法を検討する。 』
目の前のことしか考えていない、極めて稚拙な対策といわざるを得ない。
もっともっと、名証が現場を重視して、入り込まなければ再発は避けられない。
いったい金融システムというものをどう考えているのであろうか?
重い重い責任を背負っていること、社会基盤を担っていることを、本当に認識しているのであろうか?
このトラブルの本当の原因は、名証の無責任さである。
富士通のせい? オペレータのせい? こればかり強調してプレスに情報を流すなんて、卑怯者のすることである。一緒に仕事をしていくのではないのか?
もちろん、ペナルティは必要だ。これは再発防止策だけではなく、今後の発展した関係を一緒に醸造するためのものでなくてはならない。
できないのならばシステム部をさっさと解体して、アウトソーシングすべきである。
素人はシステムに携わってはならない。
コメント